奈良県障害児教育研究会だより H14、1~2月H15

平成15年 3月6日発行 No.7

 


      今期第3号(最終号)となります。1月の奈障研大会参加の先生方はごくろうさまでした。講演の熊本大学の

      肥後先生は1962年生まれの若手研究者。明快なお話にファンになってしまいました。まもなく「今後の特別

      支援教育の在り方について」の最終報告が出るということです。今動きつつある何かをしっかりと捕らえない

      といけませんね。

            (文責 奈良市幹事 朱雀小学校 八木)

 

平成14年度 第5回理事幹事会   H15年 1月10日(金)

拡大理事幹事会        奈良県社会福祉総合センター

・第34回奈良県障害児教育研究大会について

   運営の手引き配布、確認。分科会ごとの報告者、司会者打ち合わせ

 

・第16回アジア知的障害者会議募金のお願い について

   奈障研大会当日に、「アジア知的障害者会議」の募金を会場内で行う。

 

<主旨の概略>

アジア知的障害者会議は2年ごとに開催され、2003年8月につくば国際会議場で(茨城県つくば市)で開催されます。この会議はアジア各国の知的障害者団体と世界各地から知的障害者本人と支援関係者が参加され、知的障害のある人々の教育・福祉・医寮・労働など、様々な課題をめぐって、講演・研究発表・協議が行われます。この会議の開催には、1億円以上の費用がかかります。経済的に厳しい状況のアジアの国々から、知的障害のある人々に参加していただくためにも費用補助が必要です。全特連は、この会議の主催団体の一つである日本知的障害福祉連盟の構成団体であり、共催団体として開設準備にあたっています。募金にご協力ください。

 

 

34奈良県障害児教育研究大会  H15年1月31日() 

全体会 県社会福祉総合センター

    分科会 県社会福祉総合センター、万葉ホール

 

 奈良市からの参加は27名(幹事、要員含む)で、他郡市と比べてさびしい感じがしま

した。奈良市の分科会担当は「就学相談と進路指導」で、2B椿井小の池上先生に報告し

ていただきました。ご苦労様でした。司会(弘田先生、白濱先生)記録(竹田先生、石井

先生)の先生方もありがとうございました。

当日、分科会会場は早く撤収しなければならず、議論を深めるまでにはいたりませんでし

たが、椿井小学校のていねいな就学相談の様子や、高次脳機能障害の話なども報告された

よい分科会でした。各地の実践や悩みなども会場から報告されました。助言者の先生から

は「その子の一生涯を見通して、その時々の課題を見極め、相談していかなければならな

い。」というまとめがありました。参加されていた二階堂養護学校の先生から、「養護学校

の教育相談をご利用ください。」との案内もありました。情報としてはH15年度に国のモ

デル事業で広陵町が「就学相談体系化事業」というものを行うそうです。

 

《次回、第35回の奈障研大会は近特連奈良県大会(H16年夏)のリハーサル大会となります。奈良市の担当

分科会は「ことば・かず」分科会で、3Bの予定。》

 

    全体講演は、肥後 祥治先生にお話いただきました。パワーポイントを使った講演で、

    明快に「中間まとめ」から読み取れること、今後の動きなど解説していただきました。

以下に簡単な要旨をお伝えします。詳細は新年度に出される紀要をご覧ください。

 

 

「特別支援教育の展開に支援者として期待されるもの」

熊本大学教育学部障害児教育学科 助教授 肥後祥治

1962年生まれ鹿児島大学を出てから保育園へ、その後、筑波大学大学院へ。

国立特殊教育研究所主任研究員を経て200210月より熊本大学へ。

 

特別支援教育について考えていることを話したい

・特殊教育と特別支援教育    ・特別支援教育と子どもたち現況

・特別支援教育と教師の現況   ・今、求められるもの

 

協力者会議の報告と方向性

S44 3月 特殊教育の基本的な〜   S46 6月 学校教育のため〜

S50 3月 重度に対する〜      S53 8月 軽度に対する〜

角丸四角形吹き出し: 協力者会議の報告の後には、必ず、何かしらの施策が行われている。この「必ず」に注意!S54  養護学校義務化  への布石が打たれてきた。

 

H4 3月 通級のまとめ     →  H5 通級が実施された。

H11  7月 LDの指導について  → モデル事業が開始された。

H13 1月 21世紀の在り方について→  何が起こるのか?

21世紀の在り方」

   乳児から卒後まで、就学指導のあり方→H14 22条の2改正。LD,ADHDに教育的対応。

養護学校センター化。専門性の向上、免許取得率のUP、総合免許

 

H14 10月 「今後の特別支援教育の在りかたについて」中間まとめ

→特殊教育サービスの展開について転換があるのでは・・・

 

特別支援教育の前提@

・ノーマライゼーションの理念の実現という施策の一環

・特別なニーズ教育に対応する←このレベルは「21世紀の在り方」と同レベル

 

特別支援教育の前提A

・財政的な制約

LDAD/HD(6%)従来の特殊教育は十分に対応できていない、と明確に書かれた!

・障害による欠陥の補填ではない教育←障害観の変化。これは大きな考え方のちがい

   ex.数ができない  旧)教えよう  新)その子の生活をどうするか

                              WHOの障害分類とも呼応した障害観の変化

・保護者の意見の把握の重要性

  →「21世紀の在り方」で初めて親の気持を汲むことが述べられた。

  →「中間まとめ」では親を支援者としてチームを組む重要性が述べられた。

・固定化された教育の場ではなく、実態に応じた教育の場の必要性

・地方分権の流れの中で地域ごとの工夫の推進  ・管理職のリーダーシップと内外の人材の活用

・保護者は支援者の一人であるという認識      NPO、親の会の活動の評価

・個別の教育支援計画の策定    ・個別の教育支援計画策定のための専門機関との連携

 

中間まとめにみる基本姿勢の転換

・現状のシステムの問題の認識 → 学校教育法の改正

・障害観の転換の認識                        ・パターナリズムからの脱却

・教師のspecial性からgeneralist性へ         ・中央集権から地方分権へ

・画一化したサービスから地域特性に応じたサービス提供網の構築

◇社会的資源の再発掘、再開発

→すべてがすべて専門家という人ではなく退職した教員や地元の医院なども範疇に。

連携の為にはコーディネーターが必要という認識

どういう人がコーディネーターか?これは書いていない

community service network(コミュニティーサービスネットワーク)

→今までのモデル事業は自分の町ではできない。サービスを必要とする子が増えている

のに間に合わない。地域でやってほしい。などの批判があるが、そっくり真似しようと

しても無理。

 

これはふって沸いた話であるのか

2年以上の学力の遅れのある子 (1995年の特総研の調査)

小学校 2年生 3.47%   3年生 4.61%   4年生 7.41%

        5年生 9.45%   6年生 9.08%

この数字に、特殊教育対象者の1.3%を加えた約10%ぐらいの子が、何らかのサービ

スを受けることになる。米国 12%、英国 20%に近くなる。

◇個別に配慮を必要とする児童生徒とはどんな子

  @学力不振          A基本的生活習慣が身についていない

  B問題行動(いじめ、非行)  C集団行動がとれない

  D情緒不安定         E病弱、肢体不自由、肥満、夜尿

  Fかんもく          G家庭の問題

  H外国籍      ⇒個別な指導が必要な子はたくさんいる。

     現在の特殊教育の対象児以外にも支援を必要としている子は沢山いて、大変な状況にあり

     サービスを必要としている。  ←  必然性 、ニーズがある。

 

誰が支援者で誰を支援するのか?

*教師が支援するとして、その支援を受けるのは子どもや親だけなのか?

教師にとっての学校

・学級経営上の問題点 ⇒ 子どもの多様化、多忙感、問題児の対応。

ノーマライゼーションへの志向性、学級崩壊の存在。

・教師間の関係性 ⇒ 率直な意見交換や他のクラスの教室経営への関わりに対する躊躇

→教師は支援の重要な対象である!!

◇ノーマライゼーションはいいと思っているが忙しくて校内委員会など立ち上げていられない。

まして他のクラスの学級経営に口出しなんて

   ←だからこそ、なおさら教師は支援対象であるのでは。 支援は子、親、そして教師

 

支援者として考慮すべき前提

     中間まとめに見る基本姿勢の転換 ⇒ 民主主義成熟へ向けての一里塚。中央集権的なこと

から、地方分権へ。親の声も反映させやすい。民主コミュニティー再生のために。

     子どもにとっての支援教育に移行すべき必然性 ⇒子どもあっての教師家業、いいんじゃな

いか。公的サービス=サーバントとして、提供するサービス=サービス業として割り切る。

     支援を必要とするのは子どもだけでなく、教師もそうであること ⇒ 一国一城の主は遠い昔、

子どもの多様性。社会の変化を考えれば、チームアプローチが当たり前。

     日本の教員養成システムの問題点。教師は高い学歴を維持してきた昔の時代。教師は学歴

ステータスではない。高い知識と専門性を持っているという前提はなくなってきている。

今や親の方がたくさんの知識を持っている時代。

     一人で問題を抱えようとしている教師⇒できない事はさっさと白旗を揚げよう!

教師も支援を受けるのが当たり前。それによって子どもが良いサービスを受けられれば、

いいのではないか。

 

     かつてのような財政状況ではないこと(この前提から出発せざるをえない)⇒物量作戦はでき

ないが、我々はもっとポテンシャルがあるんじゃないか。教師集団はまれに見る人材バンクである。

◇特殊教育の専門家が必要ではない時代。従来のような専門家が教師になれない。

⇒専門家ですら、一人で抱え込めない現在の子どもたちの状況。スーパーマンを作ろうと

してきた養成の問題。これ以上のスーパーマンはできない。ジェネラリストへ。

◇今までの障担は専門家で、勉強した人だけが特殊教育をするという考え方であったのでは。

◇良いこと半分、悪いこと半分。お金のない自治体はどうするのか。

 

支援者に何がもとめられるのか

せっかく学んだ人が現場で生かされないケースはたくさんある。一人でお金を出して、学んでも

生かされていない。人材バンクをコーディネートするところが欠けている。

→今何が必要かを見抜く力

 

○特総研「教師の専門性の研究−IEPの作成に焦点をあてて−」

知的障害に関する教師のトレーンングプログラム開発に関する研究

1、基礎理論とアセスメント  2、IEP作成上の必要事項

3、IEPの実行における諸問題    →1〜3 IEPをつくり実行、モニタする力

4、殊教育の成功者としてのパートナーシップ

  一人の先生が一生懸命勉強してもだめ。身近にあるキラ星のような人的支援を生かすこと。

今目の前にある大切なものを見つけ出せていない→これができなければ特別支援狂教育は

成り立たない。☆教師間のパートナーシップ。

5、害児教育の有効性を支えていく思潮の変化

  専門家がその子にサービスを提供しないと考えれば専門家は専門家でなくなる。特別な場

ではなく、日常の場で。認定就学者→ノーマライゼーションとしては当たり前。当たり前のこと

が当たり前でなくなる。親のーズは教育サービスを向上させる。IEP作成などの情報は親の

ほうがたくさん持っている。

6、IEP作の意味

  IEPを作る時、一人で作ってはいけない。一人で作ると「独指導計画」ある。

 

ビジョンとしての他国の例

アメリカ ニューヨーク州 シラキウス市で起こっていること。

・脱施設化とインクルージョン     ・コミュニティーでの生活の支援

・人権擁護委員会           ・セルフ‐アドボカシー

・ワンキャンパス(高卒後の大学での講座のようなもの)

     養護学校がなく、インクルーシブ‐スクールとなっている。2人のスペシャル教員で

2425名の生徒(内、IEPを持っている子が7名)。傍で見ていると、どの子がIEP

所有者かわからない日常の授業。State standard testの時だけIEPを持つ子7名が

集まって、説明を受けながらテストをする。 

 

最後に

夢というキーワード

driven by dream よく彼らが言っていた(夢で動く)

*インクルージョンの考え方はデータを重ねた結果たどり着いたものではなく、

夢から導き出した、実践である。

*夢から今を考える

*障害が彼らの生活を規定していたものではなく、彼らの生活を規定しているのは、

我々の側であったのだ。

*こんなことができればいいよね〜 ここからスタート!

大かっこ: 個人的メモからの要約ですので、細かい部分は捉え方の違いがあると思います。ご了承ください。奈障研便りも今年度最後です。1年間ありがとうございました。3月の「今後の特別支援教育の在り方」最終報告が待たれるところですね。            文責  朱雀小 八木*今受け持ちの子が将来どのように生きてほしいか。